遺族年金
遺族年金
遺族年金は、いずれかの年金制度の被保険者が亡くなられた場合に受給要件を満たしている場合に支払われる遺族給付です。
- 国民年金(第1号被保険者・第3号被保険者):遺族基礎年金
- 厚生年金・共済組合(第2号被保険者) :遺族厚生年金・遺族共済年金
遺族年金の受給イメージ
遺族年金の給付は、受給権者(受給できる遺族)によって、次のようになります。
遺族基礎年金(国民年金)
受給要件
遺族基礎年金は次のいずれかに該当する人が亡くなったときに支給されます。
- ①被保険者が亡くなったとき
- ②被保険者であった人で日本国内に住所を有する60歳以上65歳未満の人が亡くなったとき
- ③老齢基礎年金の受給権者が亡くなったとき
- ④老齢基礎年金の受給資格期間を満たした人が亡くなったとき
※①、②の場合、次の保険料納付要件を満たすことが必要です。
保険料納付要件
- ①【原則】死亡日の前日において、当該死亡日の属する月の前々月までの被保険者期間のうち3分の2以上が保険料納付済期間・保険料免除期間(学生納付特例の期間も含む)であること。
- ②【特例】死亡日が平成28年4月1日前の場合、65歳未満であって、死亡日の前々月までの直近の1年間が保険料納付済期間・保険料免除期間(学生納付特例含む)であること。
受給権者の範囲
死亡した方によって生計を維持されていた
- 子のある妻
- 子
※「子」とは、- 18歳に達した後最初の3月31日までにある子。または、
- 20歳未満であって障害等級1級又は2級に該当する子で、かつ現に婚姻していない子。
※「生計維持」の認定については、亡くなった人と生計を同じくしており、年収850万円以上を
将来にわたって得られない人をいいます。
遺族基礎年金額(平成22年度)
子のある妻 | 妻 | 792,100円 |
---|---|---|
第1子・第2子 | 各227,900円 | |
第3子以降 | 各 75,900円 | |
子 | 第1子 | 792,100円 |
第2子 | 227,900円 | |
第3子以降 | 各 75,900円 |
※ 平成22年度価格
参考:
子 の 数 | 子 の あ る 妻 | 子 |
---|---|---|
子1人の場合 | 792,100円+227,900円 | 792,100円 |
子2人の場合 | 792,100円+227,900円x2 | 792,100円+227,900円x1 |
子3人の場合 | 792,100円+227,900円x2+75,900円x1 | 792,100円+227,900円x1+75,900円x1 |
子が4人以上の場合 | 1人つき75,900円加算 | 1人つき75,900円加算 |
- 年金額の増額改定
- 妻が遺族基礎年金の受給権を取得した当時胎児であった子が生まれたときは、翌月から増額される
- 年金額の減額改定
2人以上いる子の内の一人を除いた他の子が次のいずれかに該当したときは、翌月から減額される。
失権(受給権の消滅)
- 遺族基礎年金の受給権は、受給権者が次のいずれかに該当したときは、消滅します。
- 死亡
- 婚姻
- 直系血族又は直系姻族以外の養子となったとき(事実上の養子縁組関係にある場合を含む)
- 妻に対する遺族基礎年金は、加算の対象になっている子が、次のいずれかに該当したときに、その受給権が消滅します。
- 死亡
- 婚姻
- 妻以外の養子になった時(事実上の養子縁組関係にある場合を含む)
- 離縁によって死亡した夫の子でなくなったとき
- 妻と生計を同じくしなくなったとき
- 18歳に達した日の属する年度の年度末が経過したとき(1級又は2級の障害の状態にある子を除く)
- 障害の状態の子が18歳以上で1級又は2級の障害の状態でなくなったとき
- 障害の状態にある子が20歳に達したとき
- 子に対する遺族基礎年金は、子が次のいずれかに該当したときに、その受給権が消滅します。
- 離縁によって死亡したものの子でなくなったとき
- 18歳に達した日の属する年度の年度末が終了したとき(1級又は2級の障害の状態にある子を除く)
- 障害の子が18歳以上で1級又は2級の障害の状態でなくなったとき
- 障害の状態にある子が20歳に達したとき
支給停止
次の場合、遺族基礎年金は支給停止となります。
- 遺族基礎年金は、当該被保険者又は被保険者であった者の死亡について、労働基準法の規定による遺族補償が行われるべきものであるときは、死亡日から6年間、その支給を停止する
- 遺族基礎年金の受給権者の所在が1年以上明らかでないときは、妻が受給権者の場合は子が、子が受給権者のときは他の子が申請することによりその支給を停止する。この場合、前者の場合は子に、後者の場合は他の子に支給される
- 妻が受給権を取得したときは、子はその間、支給停止される
- 子が受給権を取得したときに生計を同じくする父又は母があるときは、その間、支給を停止する。
寡婦年金
寡婦年金は、以下のすべての要件に該当する場合に支給されます。
- 支給要件
- 死亡日の前日において、死亡日の属する月の前月までの第一号被保険者(任意加入被保険者を含む)としての被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が25年以上ある夫が死亡したこと
- 夫の死亡の当時夫によって生計を維持していたこと
- 夫との婚姻生活が10年以上継続した65歳未満の妻であること
- 死亡した夫が障害基礎年金の受給権者であったことがなく、老齢基礎年金の支給を受けていなかったこと(旧法の年金を含む)
- 支給期間
- 妻が60歳未満のときは、妻が60歳に達した日の属する月の翌月から寡婦年金の支給を開始し、妻が65歳に達した日の属する月まで支給される。
- 妻が60歳以上のときは、夫が死亡した日の属する月の翌月から寡婦年金の支給を開始し、妻が65歳に達した日の属する月まで支給される。
- 支給額
死亡日の属する月の前月までの第一号被保険者(任意加入被保険者を含む)としての被保険者期間に係る死亡日の前日における保険料納付済期間と保険料免除期間を基礎にして、老齢基礎年金の例によって計算した額の4分の3に相当する額。 - 失権(受給権の消滅)
- 65歳に達したとき
- 死亡したとき
- 婚姻したとき(事実上の婚姻関係を含む)
- 直系血族又は直系姻族以外の養子となったとき(事実上の養子縁組関係を含む)
- 繰上げ支給の老齢基礎年金の受給権を取得したとき
- 支給停止
労働基準法による遺族補償が行われるときは、死亡日から6年間、寡婦年金の支給を停止される。
死亡一時金
- 支給要件
死亡一時金は、死亡日の前日において死亡日の属する月の前月までの第一号被保険者(任意加入被保険者・特例任意加入被保険者を含む)としての被保険者期間期間に係る保険料納付済期間の月数と保険料1/4免除期間の月数の3/4、保険料半額免除期間の月数の1/2、保険料3/4免除期間の月数の1/4に相当する月数を合算した月数が36月以上であるものが死亡した場合に、その方の遺族に支給される。
※但し、次のいずれかの場合、支給されない。- 老齢基礎年金又は障害基礎年金の支給を受けたことがある者が死亡したとき(旧法を含む)
- 死亡日においてその者の死亡により遺族基礎年金を受けることができる者があるとき。ただし、当該死亡日の属する月に遺族基礎年金の受給権が消滅したときを除く
- 死亡日において胎児であった子が生まれた日においてその子又は死亡した者の妻が遺族基礎年金を受けることができるに至ったとき。ただし、胎児が生まれた日の属する月に遺族基礎年金の受給権が消滅したときを除く(例:胎児の死亡)
- 子が受給権を取得したときに、生計を同じくするその子の父又は母があるとき
- 受給権者の範囲及び順位
- その方によって生計を同じくしていた遺族(①配偶者、②子、③父母、④孫、⑤祖父母、⑥兄弟姉妹の中で優先順位の高い方)に支給されます。
ただし、子が遺族基礎年金の受給権を取得して、生計を同じくする父又は母があることにより遺族基礎年金が支給停止されてるときは、死亡したの者の配偶者に死亡一時金が支給される。
- その方によって生計を同じくしていた遺族(①配偶者、②子、③父母、④孫、⑤祖父母、⑥兄弟姉妹の中で優先順位の高い方)に支給されます。
- 支給額
- 死亡一時金の額は、保険料を納めた月数に応じて120,000円~320,000円です。
- 付加保険料を納めた月数が36月以上ある場合は、8,500円が加算されます。
- 寡婦年金と死亡一時金の両方を受けられる場合は、選択によりいずれか一方が支給されます。
未支給年金
- 受給権者(未請求者も含む)が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき年金給付でまだその者に支給しなかつたものがあるときは、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹であつて、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の年金の支給を請求することができます。
遺族厚生年金(厚生年金保険)
受給要件
遺族厚生年金は次のいずれかに該当する人が亡くなったときに支給されます。
- 短期要件
- ①厚生年金保険の被保険者が亡くなったとき
- ②被保険者資格を喪失した後、被保険者期間中に初診日のある病気や
ケガが原因で初診日より5年以内に亡くなったとき - ③障害厚生年金1級・2級の受給権者が亡くなったとき
- 長期要件
- ④老齢厚生年金の受給権者または受給資格を満たしているものが亡くなったとき
※但し、①・②の場合は国民年金の保険料納付要件が問われます。
又、短期要件・長期要件は額や併給の調整の際に重要になります。
※[参考]遺族共済年金との違い
- 保険金納付要件がありません。
受給権者の範囲
死亡の当時被保険者によって生計維持されていた
- ①配偶者
- ②子
- ③父母
- ④孫
- ⑤祖父母
※但し、「妻」以外の方には次のような条件があります。
※[参考]遺族共済年金との違い
- 「夫」・「父母」・「祖父母」に年齢要件がありません。但し、60歳までは支給停止になります。
(受給権と取得した年月日により56歳から59歳で受給できる場合がありました。) - 「子」・「孫」について、障害等級1級又は2級に該当している場合は20歳未満という要件がありません。
- 転給の制度があります。すなわち、受給権者が死亡した場合は第2順位者に遺族共済年金が支給されることになります。
受給できる遺族の順位
遺族厚生年金を受給できる遺族には順位付けがされていて、それぞれの上順位者が受給できるときは他の遺族は受給権者(受給権が発生しない)となれない。
- ①「妻」・「夫」・「子」
- ②「父母」
- ③「孫」
- ④「祖父母」
※死亡の当時胎児であった子が出生した場合は死亡の当時その人により生計維持されていたとみなされます。
※「夫・父母・祖父母」については、被保険者の死亡の当時55歳以上でないと受給権が発生しませず、また、支給は60歳からとなります。
※30歳未満の子のない妻は5年間の有期給付となります。詳細は、こちら を参照下さい。
遺族厚生年金額(平成22年度)
遺族厚生年金額は、現状次の計算式で算出した額となります。
※平成22年度
- 短期要件の場合
- 給付乗率(※)生年月日による読み替えはありません。
- 被保険者期間の月数が300に満たない時は300月として計算します。
- 長期要件の場合
- 給付乗率(※)を生年月日により読み替えます。
- 被保険者期間の月数は実期間で計算します。
失権(受給権の消滅)
遺族厚生年金の受給権は、次のいずれかに該当した場合、消滅します。
- 死亡
- 婚姻(事実上の婚姻関係にある場合を含む)
- 直系血族または直系姻族以外の人の養子(事実上の養子縁組関係にある場合を含む)
- 養子縁組により死亡した人の養子または養親となっていた者が離縁
- 受給権を取得した当時30歳未満である妻が、その受給権取得以後に「胎児出生による遺族基礎年金の受給権」を取得することなく5年経過したとき ☞こちらへ
- 30歳未満で遺族厚生年金及び遺族基礎年金の受給権を取得した妻が、その受給権取得以後30歳未満である間に遺族基礎年金の受給権が消滅(子の死亡、離縁、18歳到達等)した場合は、当該遺族基礎年金の失権から5年経過したとき こちら へ
- 受給権者である子又は孫が18歳に達する日の属する年度の年度末を経過 (1級又は2級の障害の状態にある場合を除く)したとき
- 受給権者である1級又は2級の障害の状態にある子又は、孫が18歳に達する日の属する年度の年度末以後その状態がやんだとき、又は20歳になったとき
- 受給権者が父母、孫又は祖父母である場合は被保険者等の死亡の当時、胎児であった子が生まれたとき
支給停止
- 被保険者または被保険者であった者の死亡について、労働基準法の規定による遺族補償が行われるときは、死亡日から6年間支給を停止される。
- 夫、父母または祖父母に対する遺族厚生年金は、受給権者が60歳に達するまでの間、その支給が停止される。
- 子に対する遺族厚生年金は、妻が遺族厚生年金の受給権を有するときは、その間、支給を停止される。
- 妻に対する遺族厚生年金は、被保険者であった者の死亡について、妻に遺族基礎年金の受給権がなく、子に遺族基礎年金の受給権があるときは、その間支給を停止される。
- 夫に対する遺族厚生年金は、子が遺族厚生年金の受給権を有する間、支給を停止される。
- 遺族厚生年金の受給権者の所在が1年以上明らかでないときは、他の受給権者の申請により、その所在が明らかでなくなったときにさかのぼって支給を停止される。
中高齢寡婦加算
中高齢寡婦加算とは、遺族厚生年金を受取れる妻に遺族基礎年金の対象となる子どもがない為、遺族基礎年金を受けられないときに、遺族厚生年金に加算されるものです。
加算額(平成22年度)
年額 594,200円(平成22年度価額)で定額です。
※65歳に達して妻自身の老齢基礎年金を受給できるようになると、この加算は停止します。
受給要件
遺族厚生年金を妻が受給している場合、その妻が40歳以上65歳未満の間は一定の条件を満たしていれば「中高齢の寡婦加算」が加算されます。
なお、死亡した夫が長期要件の場合は、死亡した夫の厚生年金の加入期間が20年(中高齢者の特例も含む)以上あることが必要です。短期要件の場合は、被保険者期間に係わらず支給されます。
- 夫が亡くなったとき、40歳以上65歳未満で、生計を同じくしている子どもがいない妻
- 遺族厚生年金と遺族基礎年金を受けていた子どものある妻(40歳に達した当時、子どもがいるため遺族基礎年金を受けていた妻に限る)が、子どもが18歳到達年度の末日に達した(障害の状態にある場合は20歳に達した)ため、遺族基礎年金を受給できなくなったとき
経過的寡婦加算について
妻が65歳になり、自分の老齢基礎年金を受けるようになると、中高齢寡婦加算が支給されなくなります(失権)。
その場合、年金額が以前より低くなる人が出てきますので、その不足分を補うため、65歳以降も一定の加算をするのが経過的寡婦加算です。
又、65歳以降に初めて遺族厚生年金を受け始めた妻にも加算されます。
ただし、昭和31年4月1日以前に生まれた人が対象で、それ以降に生まれた人は加算を受け取ることはできません。
支給額はちょうど中高齢寡婦加算の額となるよう、生年月日に応じて設定されています。
[経過的寡婦加算]=[中高齢寡婦加算]ー[妻の老齢基礎年金]x[生年月日による乗率]
⇒ 594,200円ー(792,100円 × 生年月日による乗率)
※上記は平成22年度
※「生年月日による乗率」は、こちら
30歳未満の妻に対する遺族厚生年金
平成19年4月より、夫の死亡時の妻の年齢と遺族基礎年金の受給権によっては、遺族厚生年金が5年間の有期年金となりました。
5年の有期年金となる場合は、次のとおりです。
- 遺族厚生年金の受給権を取得した当時30歳未満の妻で、遺族基礎年金の受給権がないとき
⇒遺族厚生年金の受給権を取得したときから5年間の有期年金 - 遺族基礎年金と遺族厚生年金の受給権を取得した妻で、30歳に到達する前に遺族基礎年金の受給権が消滅したとき
⇒遺族基礎年金の受給権が消滅したときから5年間の有期年金
遺族厚生年金と老齢厚生年金の併給調整
60歳から
厚生年金保険の被保険者期間のある妻が、65歳未満で遺族厚生年金と特別支給の老齢厚生年金等の両方を受けられるときは、60歳以後に次のいずれか一方を選択する。
- 遺族厚生年金
- 妻の特別支給の老齢厚生年金(または報酬比例部分相当の老齢厚生年金)
65歳から
- 65歳以上の遺族厚生年金の受給権者が、自身の老齢厚生年金の受給権を有する場合、
- 平成19年4月1日までは、原則、どちらを受けるか選択することとなっていましたが、
- 平成16年の年金制度改正により、平成19年4月1日からは、--自分自身が納めた保険料を年金額に反映させるため、65歳以上で遺族厚生年金と老齢厚生年金を受ける権利がある方は、老齢厚生年金は全額支給となり、遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する額の支給が停止となります。
- 平成19年4月1日前に遺族厚生年金を受ける権利を有し、かつ、同日においてすでに65歳以上の方は、
- 平成19年4月1日以後と同様に、次の①から③のうち、いずれかの組合せを選択することになります。
- ただし、③は、遺族厚生年金の受給権者が、死亡した方の配偶者である場合に限ります。
未支給年金
- 受給権者(未請求者も含む)が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき年金給付でまだその者に支給しなかつたものがあるときは、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹であつて、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の年金の支給を請求することができます。
労災保険との併給調整
- 業務上や通勤途上の事由での死亡で労災保険から遺族(補償)年金を受けている場合,遺族基礎年金,遺族厚生年金は全額受けられ,労災保険の年金額が減額調整(遺族基礎年金・遺族厚生年金との併給は80%,遺族基礎年金だけなら88%,遺族厚生年金だけなら84%)される。